リハビリテーションと聞くと、多くの方が歩行訓練を思い浮かべます。 けれど回復期リハビリテーション病棟には、**「話すこと」と「食べること」**を専門に担当する職種がいます。言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist/ST)です。
STが向き合う、3つの領域
1. 嚥下(えんげ)=飲み込み
脳卒中のあとに多いのが、飲み込みの障害です。うまく飲み込めないと、食べ物や唾液が気管に入り、誤嚥性肺炎につながります。「食べられない」ことは、体力の低下にも直結します。
2. 失語症=言葉が出てこない
頭の中では分かっているのに言葉が出てこない、相手の言うことが理解しにくい。失語症は、ご本人にとっても、ご家族にとっても、非常にもどかしい障害です。
3. 構音障害=発音がうまくいかない
言葉は分かるのに、口や舌が思うように動かず、はっきり発音できない状態です。
嚥下のリハビリは、こう進みます
「飲み込みの訓練」と聞くと、ひたすら飲み込む練習をするイメージがあるかもしれません。実際はもっと段階的です。
① 評価 まず、どの段階でうまくいっていないのかを見極めます。飲み込む前の準備なのか、喉を通るタイミングなのか。必要に応じて、造影検査や内視鏡検査で実際の動きを確認します。
② 間接訓練(食べ物を使わない) 口の周りや舌、喉の筋肉を動かす訓練、発声、呼吸の練習など。食べ物を使わないため、まだ食事が始められない段階からでも取り組めます。
③ 直接訓練(食べ物を使う) とろみをつけた飲み物やゼリーなど、その方が安全に飲み込める形態から始めます。姿勢や一口の量、スプーンの角度まで細かく調整します。
④ 食事形態の調整 管理栄養士と相談し、きざみ食・軟菜食などの形態を決めます。**「安全に、できるだけ普通に近いものを」**が目標です。
STだけでは、完結しません
嚥下のリハビリは、STが訓練室で行って終わりではありません。
- 看護師が、病棟での毎食の様子と、むせの有無を記録する
- 管理栄養士が、その方に合った食事形態と栄養量を調整する
- 医師が、検査結果をもとに全体の方針を決める
- 理学療法士・作業療法士が、食事の姿勢を保つための体づくりと、自分で食べる動作を支える
当院が「リハビリはチームでやるもの」と考えているのは、こうした場面で実感するからです。
ご家族にお願いしたいこと
面会にいらしたとき、こんなことを教えていただけると助かります。
- 入院前は何を好んで食べていたか(目標設定に直結します)
- どんな話し方をする方だったか(失語症のリハビリで手がかりになります)
- 家に帰ったとき、どこで、誰と食事をするのか
リハビリの目標は「訓練室でできること」ではなく、**「家に帰ってからの生活」**です。その情報は、ご家族しか持っていません。
当院のリハビリテーション体制については回復期リハビリテーション病棟と多職種チームをご覧ください。